
寄与分 |
|
|||
| 寄与分 |
寄与分の対象者 寄与分は法定相続人の中で、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者が対象となります。 寄与分の要件 @ 特別の寄与 A 被相続人の遺産が維持・増加した B 「寄与」と「被相続人財産の維持・増加」との間の因果関係 夫婦間の協力扶助義務、親族間の互助義務、扶養義務の範囲として通常期待される程度の貢献は特別の寄与分とは認められません。 寄与の具体例 経済的援助: 被相続人の事業資金の援助や生活費の援助を行った場合。 労務の提供: 被相続人の事業に従事して、その発展に貢献した場合。 看護・介護: 被相続人の介護や看護を長期間にわたって行い、財産の維持に貢献した場合。 管理・運営: 被相続人の不動産や事業の管理運営を行い、財産の価値を維持・増加させた場合。 |
寄与分の計算は、被相続人の財産全体に対する貢献度を評価し、その貢献度に応じて相続分を調整します。具体的な手順は以下の通りです。
寄与分を主張する相続人の貢献内容を具体的に確認します。経済的援助、労務提供、看護・介護、管理運営などの具体的な行為とその期間を明らかにします。
寄与の具体的内容に基づいて、その経済的価値を評価します。例えば、労務の提供であれば、通常の賃金相当額を基に評価します。
寄与分の額を算定し、遺産総額から寄与分を控除した額を基に相続分を再計算します。 寄与分の主張と手続き
相続人が寄与分を主張する場合、他の相続人との間で協議を行います。協議が成立すれば、その内容を基に遺産分割を行います。
協議が成立しない場合、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立て、寄与分の認定を求めます。調停が不成立の場合は、家庭裁判所の審判により寄与分が決定されます。
調停や審判では、寄与分の具体的な内容や貢献度についての証拠を提出し、裁判官が寄与分を評価して最終的な判断を行います。 |
例1: 経済的援助による寄与分 父親が亡くなり、遺産として2億円が残されました。相続人は配偶者と子供3人です。長男が父親の事業に1,000万円の資金援助を行い、その結果、事業が発展して財産が増加したとします。この場合、長男の寄与分として1,000万円が認められ、遺産分割において長男の相続分が増加します。 例2: 介護による寄与分 母親が亡くなり、遺産として5,000万円が残されました。相続人は子供3人です。長女が母親の介護を10年間行い、その結果、母親が施設に入る必要がなくなり、財産が維持されたとします。この場合、長女の介護の寄与分が評価され、遺産分割において長女の相続分が増加します。 |
![]() |
![]() |
![]() |
| 特別寄与料 |
目的 特別寄与分は、被相続人の財産形成や維持に対して特別な貢献をした相続人以外の親族が、その貢献を評価して相続財産の一部を請求できる制度です。これにより、相続人以外の親族がその貢献に対する報酬を受け取ることができます。 法的根拠 特別寄与分は、民法第1050条に基づいて認められます。 |
| 民法第1050条 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6箇月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときは、この限りでない。 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第900条から第902条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。 |
特別寄与料を請求できるのは、相続人以外の親族です。親族とは6親等血族3親等姻族があたります被相続人の子供の配偶者(息子の妻は、相続人にはなりませんが、義父から見れば1親等姻族の親族になります。) |
特別の寄与があること 被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与をしたことが必要です。例えば、被相続人の介護や看護、家業の手伝い、経済的援助などが該当します。 寄与が無償であること 対価を受け取っていないことです。 財産の維持・増加 寄与によって、被相続人の財産が維持か増加していることです。 献身的に介護をした場合、介護費用の出費がかからなかったことになります。そこで被相続人の財産が維持されたことになります。 相続人以外の親族であること 特別寄与分を請求できるのは、相続人以外の親族に限られます。相続人である場合は、寄与分として評価されます。 相続放棄や廃除、相続欠格にあたる親族は対象になりません。 |
協議 相続人と特別寄与分を主張する者との間で協議を行い、特別寄与分の額について合意を図ります。 家庭裁判所への申立て 協議が成立しない場合、家庭裁判所に対して、特別の寄与に関する処分の調停・審判を行います。家庭裁判所が特別寄与分の有無とその額を判断します。特別寄与を主張するものは、自分の寄与について主張をしなければいけません。そこで証拠となるものをそろえておく必要があります。 看病や介護をしたのであれば、日々記録を付けておくことや、必要となった費用のレシートなども保管しておきます。 |
| 特別寄与料の請求は、相続の開始および特別寄与があることを知った時から6ヶ月以内、または相続開始から1年以内に行う必要があります。 |
特別寄与分の評価方法は、定まった額や計算方法が確立しているわけではありません。寄与の具体的内容や期間、経済的価値などを考慮して決定されます。具体的な評価は、協議や家庭裁判所の審判を通じて行われます。 例1 寄与が介護であった場合、介護専門家のよるサービスと比較すると、親族による介護は一定程度評価が下がります。この率を裁量割合といい、0.7か0.8前後と思われます。 そこで、次のような計算して定めるのも一つの方法です。
例2 被相続人が生前に事業を営んでおり、無償で働いていた場合。
通常得られたであろう給与額は、職種や働き、時間などから算出したり、賃料センサス(政府が出している一定の地位の人の平均賃金)を利用して定めることもできます。 |
| 特別寄与料は遺贈として扱われます。そのため相続税の納付が必要になります。また、1親等血族および配偶者以外の相続人として扱われるため、2割加算が適用されます。 |