医療過誤


医療訴訟


病院の対応

医療過誤が発生したときには、患者やその家族への対応、医療機関の内部対応、法的対応など、多角的なアプローチが求められます。医療過誤は、医療の現場で起こることがあるものの、適切に対応することで、被害者の救済と再発防止が図られます。

1. 事実確認と初期対応
速やかな事実確認: 医療過誤が疑われる場合、医療機関はまず事実関係を確認する必要があります。これには、医療スタッフの聞き取り調査、診療記録の確認、関連データの収集が含まれます。
患者の安全確保: 患者の状態が悪化している場合は、直ちに適切な医療措置を講じて、患者の安全を確保することが最優先されます。
医療過誤の特定: 過誤が確認された場合、具体的にどのようなミスが起きたのか、誰が関与したのかを明確にします。これには、誤診、投薬ミス、手術の失敗など、さまざまなケースが考えられます。

2. 患者・家族への説明と対応
誠実な説明: 医療過誤が確認された場合、医療機関は速やかに患者やその家族に対して事実を説明します。この説明は誠実かつ透明性を持って行われるべきです。
謝罪: 過誤が明らかになった場合には、医療機関は謝罪を行い、今後の対応についても誠実に説明します。謝罪は、医療機関としての責任を認める意味でも重要です。
補償と賠償についての説明: 患者が医療過誤によって損害を被った場合、補償や賠償の可能性についても説明します。この段階では、弁護士や保険会社と連携することが必要になることがあります。

3. 医療機関の内部対応
内部調査の実施: 医療過誤の原因を究明するため、内部調査を実施します。調査には、関係者全員の聞き取りや、診療プロセスの見直しが含まれます。
再発防止策の検討: 調査結果を基に、再発防止策を検討し、医療機関内での教育や手順の見直しを行います。例えば、診療手順の改善、スタッフの再教育、医療機器の適切な使用方法の確認などです。
リスク管理体制の強化: 医療過誤が発生したことを受けて、リスク管理体制を見直し、改善することが求められます。これには、リスクマネジメントチームの設置や、定期的なリスク評価の実施が含まれます。

4. 法的対応
弁護士との相談: 医療過誤に関して法的な問題が生じた場合、早期に弁護士と相談し、対応方針を決定します。弁護士は、法的リスクの評価、賠償責任の有無、訴訟対応の支援を行います。
保険会社との連携: 多くの医療機関は、医療過誤に備えて保険に加入しています。過誤が発生した際には、保険会社に連絡し、保険の適用範囲や賠償手続きについて確認します。
訴訟対応: 患者や家族が医療過誤に対して訴訟を起こす場合、医療機関は弁護士と協力して法的な対応を進めます。これには、証拠の収集、証人の準備、裁判所での主張の準備が含まれます。

5. 公的機関との対応
行政機関への報告: 必要に応じて、医療過誤について行政機関に報告する義務があります。これには、厚生労働省や地方自治体の保健所への報告が含まれることがあります。
医療審議会や第三者機関の活用: 一部のケースでは、医療過誤の解決や再発防止のために、医療審議会や第三者機関の調査や介入を求めることが考えられます。

6. コミュニケーションと情報公開
内部および外部への情報公開: 医療過誤の影響が大きい場合、医療機関は内部スタッフおよび外部関係者(場合によっては一般公衆)に対して、適切な範囲で情報を公開することが求められることがあります。
メディア対応: 重大な医療過誤が発生した場合、メディアが報道する可能性があります。その際、適切な情報提供を行い、誤解を防ぐための広報対応が必要です。

7. 再発防止と教育の強化
教育・研修の実施: 再発防止のため、全スタッフに対して定期的に研修を行い、医療過誤を未然に防ぐための知識とスキルを向上させます。
プロトコルの見直しと改善: 診療プロセスや手順書を見直し、必要に応じて改訂を行います。特に、過誤が発生しやすいとされる分野については、重点的な改善が求められます。

患者側の対応
医療過誤によって後遺症が残った場合、適切な対応を取ることが重要です。

1. 医療機関への確認と説明要求
詳細な説明を求める: まず、医療機関に対して、何が起きたのか、どのようなミスが発生したのか、詳細な説明を求めます。この際、医療記録や検査結果などの情報を請求し、可能な限り正確な情報を入手します。
診療記録の開示請求: 自分や家族の診療記録(カルテ)や手術記録を取得します。これらの記録は後の法的手続きにおいて重要な証拠となります。

2. セカンドオピニオンの取得
他の医療機関での診断: 後遺症が残った場合、別の医療機関でセカンドオピニオンを受けることを強く推奨します。独立した医師の意見を聞くことで、過誤の影響や後遺症の程度について客観的な評価を得られます。

3. 専門家(弁護士)への相談
医療過誤に詳しい弁護士への相談: 医療過誤は専門的な知識を要するため、医療過誤や医療訴訟に詳しい弁護士に相談します。弁護士は、過誤の有無や責任の所在、賠償請求の可能性などについて法的な助言を提供します。
法的対応の検討: 弁護士と相談しながら、医療機関に対する損害賠償請求や、場合によっては訴訟を起こすかどうかを検討します。

4. 損害賠償請求
損害賠償の範囲: 医療過誤によって後遺症が残った場合、損害賠償の対象となるのは、治療費、慰謝料、逸失利益(後遺症による収入の減少分)などです。これらを基に賠償金の請求額を計算します。
交渉と和解の試み: まず、医療機関との間で損害賠償について交渉を試みます。医療機関やその保険会社と和解する場合もありますが、納得できない場合は訴訟を起こすことになります。

5. 訴訟の準備と手続き
証拠の収集: 訴訟を起こす際には、医療記録、セカンドオピニオンの結果、専門家の意見書などの証拠を収集します。
訴訟の提起: 弁護士とともに、裁判所に対して医療過誤訴訟を提起します。訴訟手続きは時間がかかることが多いため、弁護士の助けを借りて慎重に進めることが重要です。

6. 後遺症の管理とリハビリ
専門医による治療: 後遺症が残った場合、専門医による治療やリハビリテーションが必要です。今後の生活の質を維持するため、医療機関と密に連携し、適切な治療計画を立てることが大切です。
生活支援サービスの利用: 後遺症が日常生活に影響を与える場合、必要に応じて介護サービスや生活支援サービスを利用します。

7. 保険の利用
生命保険や障害保険の利用: 生命保険や障害保険に加入している場合、保険金の請求が可能です。保険会社に連絡し、必要な手続きを確認します。
医療過誤に対する保険: 一部の保険商品には、医療過誤に対する補償が含まれている場合があります。これも活用できるかどうか確認します。

8. 精神的サポート
カウンセリング: 医療過誤による後遺症は、精神的なストレスや不安を引き起こすことがあります。心理カウンセリングや精神科のサポートを受けることで、精神的な健康を保つことが重要です。
サポートグループ: 同じような経験をした人々のサポートグループに参加することで、共感を得たり、実際に役立つアドバイスを受けたりすることができます。

9. 再発防止のための行動
医療機関へのフィードバック: 後遺症が残ったことに対して、医療機関にフィードバックを提供することが再発防止につながる場合があります。医療機関が改善策を講じるために、患者からのフィードバックは重要です。
後遺症が残るような重大な医療過誤は、患者とその家族にとって深刻な問題です。適切な法的支援を受けつつ、医療機関と協力して今後の対応を進めることが、被害者の権利を守り、生活の質をできるだけ維持するために重要です。

医療過誤に対する損害賠償請求の難易
医療過誤が発生した場合、病院側は容易には過誤を認めません。そして、資料や情報は医療機関側に集中して存在しています。医療関係施設を相手に損害賠償を請求するために必要なのは、カルテや看護記録といった病院側が作成した記録の開示請求することと、他の協力的な医療施設を見つけることです。
医療関係訴訟は専門性が高く、弁護士に相談する場合も医療訴訟に特化した法律事務所を見つけることをお勧めします。

医療過誤の証明の困難さ
過失の証明: 医療過誤訴訟において、最も難しいのは「過失」の証明です。これは、医師や医療機関が適切な医療標準に従わなかったこと、またその過失が患者の損害(例えば後遺症や死亡)に直接つながったことを証明する必要があります。
因果関係の証明: 損害が医療過誤によって引き起こされたことを証明する必要があります。しかし、患者の病状自体が複雑な場合や、損害が複数の要因によって生じた場合、因果関係を明確にするのは困難です。

専門知識の必要性
医療知識の必要性: 医療過誤訴訟には、高度な医療知識が必要です。法廷での証明には、医療の専門家の意見書や証言が不可欠です。これには専門医の協力が必要ですが、専門家を見つけるのは簡単ではありません。
専門家の証言: 医療過誤を証明するためには、同じ分野の医師からの証言が重要です。しかし、医療業界の中で証言を得るのは難しいこともあります。

訴訟の時間とコスト
訴訟にかかる時間: 医療過誤訴訟は、一般的に長期にわたることが多いです。証拠の収集や専門家の意見書の準備、裁判所での審理が何年も続くことがあります。
費用の負担: 訴訟にかかる費用も高額になる場合があります。弁護士費用、専門家の意見書作成費用、証拠収集のための費用など、訴訟費用は大きな負担となることがあります。

心理的負担
精神的ストレス: 医療過誤訴訟は、患者やその家族にとって精神的な負担が大きいです。裁判が長期化する中で、訴訟の進展が遅く、精神的な疲弊が蓄積されることがあります。

医療機関側の対応
防衛的医療の可能性: 医療機関側は、医療過誤訴訟に備えて防衛的に対応することが一般的です。これには、強力な法務部門や、保険会社による支援が含まれ、患者側にとっては訴訟を進める上で強力な壁となります。

和解の可能性
和解の選択肢: 多くの場合、訴訟を続けるよりも、早期に和解を図る方が現実的です。和解は、訴訟費用や時間、精神的負担を軽減するための一つの選択肢ですが、提示される和解金が必ずしも満足いくものではない可能性もあります。

弁護士のサポートの重要性
専門弁護士の選択: 医療過誤訴訟を成功させるためには、医療過誤に精通した弁護士のサポートが不可欠です。経験豊富な弁護士であれば、証拠の収集や専門家の手配、裁判の進行において有利に働く可能性があります。

代替的解決手段の検討
ADR(裁判外紛争解決手続): 裁判に頼らず、調停や仲裁といった代替的な解決手段を活用する方法もあります。これにより、迅速かつ費用を抑えた解決が期待できることもあります。
医療訴訟は、専門性が高く、この分野に特化した法律事務所へ依頼や相談をするのが良いと言えます。
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