損害賠償の場面


損害賠償請求ができる場面


損害賠償請求が行われる場面にはさまざまな状況があります。
損害賠償を請求する際、どの規定を根拠にするかによって、被害額や立証の難易度が変わります。
また、請求する額は、判例の蓄積によって相場が定まっていることがあります。被害者が自分一人で請求すると、十分な補償が受けられないままで解決済みとされるおそれがあります。
また加害者が自分だけで請求に応じると、通常よりも膨大な被害額を支払うことになってしまうことがあります。
適切な賠償を決めることは、被害者にとっても、加害者にとっても容易なことではありません。

根拠法
民法や個別法など、さまざまな法令によって、損害賠償が規定されています。それぞれで要件や賠償の範囲が異なります。

民法
第709条(不法行為による損害賠償): 他人に損害を与えた場合、その行為が故意または過失によるものであれば、損害賠償義務が生じます。これは一般的な不法行為に基づく損害賠償請求の根拠となります。
第415条(債務不履行による損害賠償): 債務者が契約上の義務を果たさなかった場合、その結果として生じた損害を賠償する責任があります。これは契約違反に基づく損害賠償の根拠です。
第710条(財産以外の損害の賠償): 精神的苦痛などの財産以外の損害についても、損害賠償が認められる場合があります。
消費者契約法: 消費者が事業者との契約において不当な条項がある場合、その条項は無効となり、損害賠償を請求できる場合があります。消費者保護の観点から、契約における不公正な取り扱いを是正するための法律です。
製造物責任法: 製品の欠陥によって消費者に損害が発生した場合、製造者や販売者は損害賠償の責任を負います。製品の安全性に関する法律であり、消費者保護を目的としています。
不正競争防止法: 不正な競争行為により他の企業に損害を与えた場合、被害を受けた企業は損害賠償を請求することができます。企業間の公正な競争を守るための法律です。
著作権法: 他人の著作物を無断で使用した場合、著作権者は損害賠償を請求できます。著作権を保護するための法律です。
自賠責法: 自動車事故の人身被害の賠償について定めます。
パワーハラスメント防止法(労働施策総合推進法): 職場におけるパワーハラスメントが原因で精神的・身体的な損害を受けた場合、加害者や使用者に対して損害賠償を請求する根拠になります。

損害賠償の場面の一例
交通事故: 加害者の不注意や過失により被害者が怪我をしたり、車両が損傷を受けたりした場合、被害者は治療費や修理費、逸失利益などを請求できます。

婚約破棄による損害: 一方的な婚約破棄により、精神的な苦痛や金銭的な損害が生じた場合、被害者は損害賠償を請求することができます。

暴行、いじめ、虐待による身体的・精神的傷害: 暴力や暴言などにより、ケガをしたり、うつ病などの症状が生じた時に損害賠償を請求できます。

他人のペットによる怪我: 他人が占有しているペットによって怪我を受けた時に、損害賠償を請求できます。

医療過誤: 医師や病院が適切な医療行為を行わず、患者に対して損害を与えた場合、患者やその家族が損害賠償を求めることがあります。

製品の欠陥: 製品の欠陥により消費者が怪我をしたり、財産に損害が生じた場合、製造者や販売者に対して損害賠償請求が行われることがあります。

労働災害: 会社の管理不行き届きや安全配慮義務違反により労働者が仕事中に怪我をした場合、労働者は会社に対して損害賠償を請求することができます。

名誉毀損: 他人の名誉を傷つけるような発言や行為が行われ、これにより被害者が精神的な苦痛や経済的損害を受けた場合、加害者に対して損害賠償を求めることがあります。

契約違反: 契約の相手方が契約上の義務を果たさず、これにより損害が発生した場合、契約相手に対して損害賠償請求を行うことがあります。

不動産トラブル: 隣地の工事や不適切な建物の管理によって、隣接する建物や土地に損害が発生した場合、損害賠償請求が行われることがあります。

プライバシー侵害: 個人のプライバシーが不法に侵害された場合、例えば無断で写真を公開されたり、個人情報が漏洩したりした場合、被害者は損害賠償を請求することができます。

消費者契約における不当な勧誘: 事業者が消費者に対して不当な方法で契約を勧誘し、その結果消費者に損害が生じた場合、消費者は損害賠償請求を行うことができます。

環境汚染: 工場や企業が排出する有害物質によって環境が汚染され、周辺住民や土地所有者に損害が生じた場合、加害者に対して損害賠償請求が行われることがあります。

パワーハラスメントやセクシャルハラスメント: 職場でのパワハラやセクハラが原因で精神的苦痛や健康被害を受けた場合、被害者は加害者や企業に対して損害賠償を請求することができます。

建設や工事による騒音や振動被害: 建設現場や工事による過度な騒音や振動が周囲の住民に対して健康被害や精神的苦痛をもたらした場合、被害者は損害賠償を請求できます。

著作権侵害: 著作物が無断で使用された場合、著作権者は損害賠償を請求することができます。これには音楽、映像、文章、写真などの無断利用が含まれます。

デジタル分野における不正アクセス: 不正アクセスやハッキングによりデータが盗まれたり、システムが損害を受けたりした場合、被害者は損害賠償を請求することができます。

悪意ある訴訟: 誰かが悪意を持って無根拠の訴訟を起こし、その訴訟が相手方に損害を与えた場合、損害賠償請求が行われることがあります。ただし条件は厳しいです。

失火による損害: 誰かの過失により火災が発生し、他人の財産に損害を与えた場合、被害者は加害者に対して損害賠償を請求することができます。日本は木造住宅が多く、賠償には制限がかかる場合があります。

公務、公共施設の管理不行き届き: 公共施設や公共の場で、管理者の過失により事故や怪我が発生した場合、被害者は損害賠償を請求することができます。国家賠償法が適用されます。

学校や教育機関の責任による事故: 学校や教育機関での管理不行き届きにより生徒が怪我をした場合、親は学校に対して損害賠償を請求することができます。

不動産の違法占拠: 不法に他人の土地や建物を占拠した場合、正当な所有者は占拠者に対して損害賠償を求めることができます。

航空機や鉄道事故: 航空機や鉄道の事故により乗客が負傷したり、命を落とした場合、被害者やその遺族は損害賠償を請求することができます。