自動車保険会社は、自賠責基準を元にして、損害賠償金を提示します。この額であれば、交渉や裁判をすることなく、「即座にお支払いします」という額です。しかし、実際に裁判をして民法709条の基づく損害賠償額を請求すると、比較して高額の判断がなされることがほとんどです。この額を裁判基準といいます。被害者側としては、交渉のときに、実際に裁判をするときにかかる費用を少し差し引いた額を提示したいと思うはずです。
保険会社としても、実際に裁判をすると費用がかかりますし避けたいところなので、交渉に応じる可能性があります。
弁護士を利用しなくても裁判基準を示して自分で損害額を提示することもできますが、あくまでも損害額は被害者の側で立証しなければなりません。保険会社は、被害者が弁護士に依頼せず自ら裁判基準を持ち出した場合でも、被害者に立証をする能力がないと判断すると、実際に裁判をしてくださいと交渉に応じないおそれもあります。裁判所は、実際にどれだけの損害が生じたかを判断し、その全額を補填することを目的とします。しかし裁判所が、実損額として判断を示すのは、証明がされたものに関してのみになります。十分な証明をする事ができず、賠償額が結局わずかになってしまうような、「やめとけばよかった」という事態は避けなければなりません。
自ら交渉をするのも一つの方法ですが、その際は自分に交渉や裁判ができるかどうかを慎重に検討なさることが賢明といえます。
このほかに、任意保険基準というもののあります。これは各任意保険会社が独自で定めているもので、これを元にして損害賠償額を提示してくることもあります。 |